東京23区で唯一の渓谷とされる等々力渓谷(東京都世田谷区)で今春、遊歩道が約3年ぶりに開放された。閉鎖の理由となった倒木の原因を専門家が探ると、問題は土の中にあった。そこで、土中の環境を改善するため採用されたのが「有機土木」という伝統的な工法。環境はどう変わったのか。(高山晶一)

石や木材を積み上げる有機土木で施工された遊歩道の斜面=東京都世田谷区の等々力渓谷で(久野千恵子撮影)
6月初めの昼下がり。平日にもかかわらず、川沿いの遊歩道は散策する観光客らの姿が絶えなかった。犬を連れて散歩していた40代の主婦は「毎週来ている。夏でも渓谷に下りてくると涼しい」と話した。

2023年7月、シラカシが倒れて遊歩道をふさいだ。強風もない、穏やかな日だった。区は「ただごとではない」と察し、樹木医に調査を依頼。シラカシは害虫の被害にあっていた上、ここ数年の暑さで水を吸い上げなくなり枯れていたと分かった。同じ状態の木が他にも見つかった。

有機土木の施工が行われる前の渓谷の斜面(世田谷区提供)
公共空間の樹木が弱ると、伐採したり、枯れた枝を剪定(せんてい)したりしておしまいにするケースが多い。しかし、区は、斜面自体の環境の悪化を重く受け止め、環境再生の専門家、高田宏臣さん(56)=一般社団法人地球守・有機土木協会代表理事=に相談。2027年度までに総延長500メートルほどの斜面を改善することにした。
高田さんが点検すると、斜面の...
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