立ち退きが迫る浅草・伝法院通り商栄会…94歳の店主「せっちゃん」は物忘れが進んでも、思い出は忘れられず

チップテック Jun 8, 2026 IDOPRESS

観光客でにぎわう東京・浅草(台東区)。その一角で長年親しまれてきたレトロな商店街が、立ち退きにより間もなく姿を消す。浅草寺に隣接し、浅草の歴史とともに歩んできた「浅草伝法院通り商栄会」の32店舗は20日からの解体工事を前に1軒、また1軒とシャッターを下ろしている。(落合夏子)

◆江戸の町並みを再現したレトロな景観

「さみしいし、悲しいよね。でも大勢の人にお世話になったから、感謝を伝えたい」。そう語るのは、父の代から50年ほど、ここで洋服店を営む星野友子さん(88)だ。

7月末までの立ち退きが迫り、一部は既に店じまいした「伝法院通り」=東京都台東区で(芹沢純生撮影)

伝法院通りは浅草寺の仲見世商店街と交差して東西に約300メートル延び、江戸町風の街並みが再現されている。このうち仲見世通りの西側に連なる32店舗は、舞台衣装や作業着、雑貨などを売る店があり、昭和の味わいある雰囲気を残す。セピア調の木肌色に統一された鉄筋造りの長屋風の店が軒を連ね、人力車の撮影スポットとしても定番だ。

だが、「公道を占拠している」として区が退去を求め、2022年に所有者らを提訴した。昨年末に和解が成立し、今年7月末までに場所を明け渡すことになり、6月20日から解体が始まる予定だ。

◆区の「不法占拠」主張に「嫌がらせも受けた」

店主たちはさまざまな思いを抱えながら、思い出とともに商品の整理と店じまいに追われている。すでに半数以上が閉店した。中には、5月末の閉店予定を知った客が殺到し、商品が早めに売り切れてしまった店も。「閉店セール」のチラシを掲げた店や、商品がほとんどない店先でぼんやりとたたずむ店主の姿もあった。

店主は70代以上の高齢者が多く、店を再開する人はほぼいない。店じまいも一苦労で、商栄会役員の石井佳子さん(51)があちこち駆け回りながら退去作業を手伝う。石井さんは「もう終わりなんだなあと思うと、涙が出てくる。たくさんのお客さんに育ててもらった」と目をぬぐった。

一時は区から「不法占拠」と主張されたことに、商栄会の西林宏章会長(64)は「違法扱いされてショックだった。嫌がらせも受けた」と肩を落とす。「今年の三社祭のみこしを見たときに、『もう来年はこの場所にいないんだな』と思った」と寂しげに話す。

◆今後は通常の区道として開放

今後、この場所はどうなるのか。区道路管理課の担当者は「何かを建てるわけでなく、通常の区道として開放する」と説明。今は道幅9メートルだが、11メートルほどになるという。

仲見世を行き交う観光客のにぎわ...

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