「ありふれている」建物だから残したい 解体危機にあった大正建築「桜縁荘」は、こうして生まれ変わった

ai Jun 5, 2026 IDOPRESS

売り出され、一時は解体も危ぶまれた大正建築がよみがえった。東京都台東区の木造住宅「桜縁荘(おうえんそう)」(旧唐木田家住宅)が5月、改修・修復工事を終えた。著名な建築家が手がけたわけでも、広く知られた名所でもない。それでも「この風景を残したい」との思いが、建物を未来へつないだ。(小倉貞俊)

改修・修復工事を終えた「桜縁荘」の外観=東京都台東区で(川上智世撮影)

◆庶民的な建物が「今では貴重な存在」

「ここは特別な名建築ではなく、当時としてはごく標準的な建物なんです」

寺院が点在する住宅街の一角にある家で、施工を手がけた川原温(ゆたか)さん(43)はこう切り出した。地元を拠点に、寺社修復にも携わる大工だ。「庶民的な建物は、ありふれていたからこそ多くが失われた。桜縁荘のような建物が、今では貴重な存在です」

「桜縁荘」の魅力を話す、大工の川原温さん(右)と建築家の宮崎晃吉さん=東京都台東区で(川上智世撮影)

1階、2階の座敷とも、庭側にL字形の縁側が巡らされ、窓には当時からの吹きガラスが残る。建具を開け放つと庭と室内が一体となるような開放感があり、柔らかな光と風が流れ込む。間取りは当時の姿を残し、かつての暮らしの気配が伝わってくる。

◆「取り壊しが近づいたけど、諦めきれなかった」

桜縁荘は1920(大正9)年、隣接する豆腐店が貸家として建てた。昭和の初め、長野県選出の衆院議員・唐木田藤五郎氏が購入。親族が所有し、人々に住み継がれながら、地域に開く催しにも使われた。春に咲き誇る庭の桜にちなみ、往時の住人が「桜縁荘」と名付けた。老朽化などから2022年末に手放され、解体の危機に直面した。

1階にある座敷=東京都台東区で(川上智世撮影)

古民家は相続や耐震化、改修費用の壁に阻まれ、姿を消していく。桜縁荘もまた、その道をたどるはずだった。

転機となったのは、...

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