今回の「懐石」をテーマとした展示を観ていると、茶の湯とは“供応の芸術”なのだと思えてくる。
「懐石」とは懐石料理のこと。今日では高級和食コースという印象だが、本来は正式な茶会(茶事)で喫茶の前に振る舞われる軽食。抹茶はカフェインを多く含んだ刺激物。空腹で飲むと体によくない。
そこで、まずは一汁三菜の軽い食事を取って、空腹を和らげてから、濃茶そして薄茶を味わって心身ともに充足するというわけだ。そのために、亭主は来客に対する心遣いを怠ってはならない。飲食はもとより、季節の草花や美術工芸品を配する環境づくり、折々に応じた会話等にも工夫を凝らす。客もそうしたもてなしに心を開き、豊かなコミュニケーションが育まれていくのだ。

「刷毛目編笠鉢」(朝鮮時代15~16世紀)(右)、「湯斗」(参考出品)=筆者撮影
現代美術的には、それは“参加型アート”に繫がる。主眼はモノではなく、場とモノを介する作者と鑑賞者の関係性の構築。赤瀬川原平や菅木志雄といった現代美術家が茶の湯や利休に興味を示したのも理解できる。
三菱財閥の創業家・岩崎家の美術コレクションを管理する静嘉堂文庫美術館の所蔵品の中から、様々な懐石の器が並ぶ今回は、従来の茶道具の展示とは一味違う。勿論、同館のお宝、国宝「曜変天目(稲葉天目)」も登場する。
が、あくまで主役は“向付(むこうづけ)”なる小鉢をはじめ、鉢や皿といった食器類に徳利(とっくり)や盃(さかずき)の酒器等。人々が注目する茶道具とは違い、“供応”の場を細やかに支える脇役的存在。ただ、そうした何げない器に凝...
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