工事費が高騰すると「プレミアム住戸」が増える…東京・日本橋の再開発、コスト回収のための「高級路線」

エネルギー Aug 3, 2026 IDOPRESS

「かつての青空を取り戻そう」と、東京・日本橋の上空を覆っている首都高速道路を地下化する工事。折からの工費高騰により、周辺で進行中の再開発に遅れが生じたことで、地下化のスケジュールにも影響が懸念されている。この再開発事業で工費がどれくらい膨らみ、どう対応しているのか。関係者への取材や資料などからたどった。(森本智之、中沢誠)

◆2年前には建設が始まる予定だったが今「解体工事中」

石造りのアーチが美しい国重要文化財の日本橋。初代の橋は1603年に整備され、東海道など五街道の起点になった。北側へ渡ると、右手の広大な一角が工事用の仮囲いに覆われ、解体工事が続いている。

日本橋室町一丁目地区の再開発に向けて解体工事が進む現場。左は日本橋三越本店=東京都中央区で

ここが「日本橋室町一丁目地区第一種市街地再開発事業」の中心のA街区だ。目の前には、日本橋三越本店や、旧三井財閥の本拠地の三井本館、周辺にも日銀など歴史を感じさせる建築物が並ぶ。再開発されれば、地上34階地下4階建て、高さ約173メートルの高層ビルが立つ。少し離れた日本橋川沿いの街区でも低層の店舗などを建てる。

ところが、再開発は当初の想定通りには進んでいない。A街区の解体が始まったのは昨年12月。もともとの計画では、すでに解体を終え、2年前の2024年夏にはビルの建設に入っているはずだった。

◆業者の応札額は予算を何百億円も上回ってしまい

室町地区で工事の遅れが多くの地権者に示されたのは、2024年1月だった。

「入札自体不調という結果でございます」。デベロッパーの三井不動産や地権者らでつくる再開発組合の会合で、事務局の担当者が声を落とした。

前年12月、ビル建設などを担う施工業者を選ぶため入札を行ったところ、金額が折り合わず不成立となった。再開発組合が想定していた予算578億円に対し、応札した大手ゼネコンのA社は969億円、B社は1346億円を提示していたという。

日本橋室町一丁目地区の再開発が行われる2つの街区=東京都中央区で、本社ヘリ「あさづる」から

地権者の一人は東京新聞の取材に「B社はもともと事業協力者として再開発に参加しており、工事も受注すると思っていた。それがふたを開けると応札額は予算の2倍以上だったので、大変なことになったと驚いた。本当に実現するのかと不安になった」と振り返った。

会合で、地権者の一人でもある再開発組合幹部は「本当に思いもしないような金額が出てきた。3年前、4年前に着工していればと言ってもいまさらどうにもならない。三井さんの地元でもあり、多少難しい問題があるかもしれないが、やっていこうという強いご意向を感じている」などと他の地権者らに呼びかけた。

◆都内の再開発の9割近くで工期の遅れや事業費の増加

工事費の高騰は、室町地区に限った話ではない。室町地区を含む都内68地区の市街地再開発事業について、東京新聞が昨秋から今年6月にかけて分析したところ、9割弱の60地区で工期の遅れや事業費の増加が生じていたことが判明した。工費高騰や人手不足で「(請け負う)ゼネコンが見つからない」という地区もあった。

日本橋室町一丁目地区の再開発の完成予想図=東京都のホームページより

室町地区でも、施工業者を確保するため、事業費の増加は避けられなかった。再開発事業では、ビルを高層化し、床をマンションやオフィスとして分譲したり、賃貸したりして建設コストを賄う。事業費が増えれば、その分、収益を増やす必要がある。

事務局の担当者は「昨今の物価上昇の影響等をみると、もともとの予算内に工事費を抑えることは現実的に困難と考えます」と地権者らに伝えた。

◆「例のない分譲価格まで引き上げる」「プレミアムフロア」

増えるコストをどう工面するのか。再開発組合は2024年11〜12月ごろの会合で対応策を説明した。目を引くのは、賃貸住宅にする予定だった高層ビルの上層階を高級分譲住宅に切り替えて高く売ることだった。

地権者への配布資料や説明によると、都心のマンションの賃料は過去2年で13%上昇しているものの、分譲価格の上昇率はさらに大きく...

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