〈奪われた文化財未完の戦後処理〉
日本による植民地支配下、韓国・利川市の五重石塔を東京都内の美術館に不当に持ち出されたとして、返還を求めている現地の民間団体の李愚靜(イウジョン)事務局長(30)が来日し「こちら特報部」の取材に応じた。日本では関心が薄く、消極的な声がある文化財返還問題。双方の溝を埋めるべく、あえて否定的な質問も投げかけた。(中川紘希)
李氏が事務局長を務める利川五重石塔還収委員会は2008年に発足した非営利民間団体。市内の政治や宗教の関係者、市民団体の代表などで構成される。年に1、2回程度来日し、石塔を展示する大倉集古館(東京都港区)を運営する大倉文化財団との対話を試みている。

五重石塔の返還を求める韓国・利川市の民間団体「利川五重石塔還収委員会」の李愚靜事務局長=東京都千代田区で
主張に根拠はあるのか。李氏は「搬出された経緯は推測ではない」と強調。韓国の国立中央博物館が、朝鮮総督府(韓国併合後、現地に置かれた日本の統治機関)が残した公文書を保存しており、集古館を設立した大倉喜八郎らが石塔の提供を求め、総督府が下付した記録があるとした。
石塔が博物館の展示品ではなく、寺院という特定の場所に属する構造物だったと指摘。「元あった土地と分離されてしまえば、その意味は半分失われてしまう」と訴えた。
「著名な人物が作った」といった具体的な史実については李氏は、個人名の記録はないとしつつ「だからといって歴史がないわけではない」と語る。
韓国の仏教における石塔は、人々が周回しながら家族の健康や国の安寧などを祈る儀式を行い「精神的な役割を果たしている。民族の象徴として重要視されていると理解してほしい」と求めた。

還収念願塔の建立を祝う式典で、石塔の周りを回り願いをささげる仏教儀式に臨む市民ら=韓国・利川市で(利川五重石塔還収委員会提供)
「一部の住民が問題視しているだけでは」との疑問には、李氏は...
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