事件が未解決のまま、大学生の娘を失った父親は6月で80歳になった。東京都葛飾区で1996年9月、上智大4年の小林順子さん=当時(21)=が自宅で殺害され、放火された事件から9日で30年。父親の賢二さんは「今日(容疑者逮捕の)電話が警察から来るかもしれない」と期待を寄せる。自身や支援者の高齢化が進む中、一日でも早い事件解決を願う切実な胸中をのぞかせる。(足達優人)
「30年たつ今でも犯人への処罰感情は全く薄れてなんていないんですよ」。記者の目を見つめ、静かに、力を込めて言った。

事件現場の自宅跡地に建てられた「順子地蔵」に手を合わせる小林賢二さん=東京都葛飾区で
母の幸子さん(80)が毎朝夕に欠かさず仏壇に供える陰膳は1万回をとうに超えた。年月を重ねても、賢二さんの中で順子さんの思い出は薄れていない。
順子さんが京成金町線の終電に乗り遅れた時、「夜中のシャッター街を一人で歩かせるわけにはいかない」と、発着駅の京成高砂駅まで自転車で迎えに行った。「夕食を終えて、さあ休むって時に『これから帰る』と電話が来るの。もう一度着替えて駅に行ってね。階段から降りてくると『迎えに来てくれたんだ』って」。約1.5キロの道のり。静かな夜道にペダルをこぐ音だけが響いた。「『自分が味わえなかった大学生活楽しんでるんだなぁ』って。そんな順子を感じていられるだけで満足だった」
英語学科に所属し、国際ジャーナリストを目指していた順子さん。ジャーナリストの故・筑紫哲也さんの大ファンだった。米国留学を2日後に控え、事件が起きた。

小林順子さん(小林賢二さん提供)
「今でもテレビを見ているとね、『日本の皆さんおはようございます。今、ニューヨークでは午前4時を迎えました』とリポートする女性が映ったりすると、どうしても順子と重なるんですよ…」。力ない声に無念さがにじんだ。
まな娘を奪った犯人はいまだ捕まらない。80代になった賢二さんは「今までなかったような切羽詰まった感じがある」と語る。
2009年には殺人事件などの被害者遺族会「宙の会」を設立。殺人罪にも適用されていた公訴時効に対して声を上げ、旧法なら時効(15年)になる直前、撤廃につなげた。

ともに活動してきた未解決事件の被害者遺族らの高齢化も進む。「事件解決に向けて世の中にアピールする活動がいつまでできるのか。一分一秒カウントダウンのような心境です」と不安の色をにじませる。
現在、宙の会として、DNA情報から顔や年齢を推定する手法の導入に向けた法整備を国に要望するなどしている。「まだまだやれることはある」と話す賢二さんは、何度も繰り返す。
「逃げ得は許さない」
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