〈ビジネス最前線〉
ベビー用品大手のピジョン(中央区)は、16年間続けたベビーカーの生産を年内で終える。段差を軽々と乗り越える「シングルタイヤ」という新風を巻き起こしたものの、原材料価格の高騰などが重荷となった。開発当初から携わったベビーケア事業本部長の大口将利さんは「街で自社製品を使う家族を見るのが何よりの喜びだった」と語る。(並木智子)

「独自の価値」にこだわったピジョンのベビーカー
ベビーカー事業に本格参入したのは2010年。1957年の創業当初から哺乳瓶で圧倒的シェアを誇ってきたが、少子化が加速する中、吟味して選ぶベビーカーでより愛されるブランドに育てたいと考えた。
当時は、大手2社による寡占市場で、販売店も限られていた。少しでも独自性を出そうと、価格を抑え、地面の熱から赤ちゃんを守るためシートの位置を高くするなどした。だが、シェアは1~2%と伸び悩んだ。
転機は2012年。「ありきたりでは何年やっても変わらない」。親が本当に望んでいることは何か。一度立ち止まることにした。
当時のベビーカーは、タイヤ2本ずつを4カ所につけた「ダブルタイヤ」が主流で、軽さなど使いやすさが重視されていた。だが、親たちに丁寧に話を聞くと、「段差を越える時の衝撃が赤ちゃんに響かないか心配」という声が目立った。
目をつけたのが、欧州で普及していたシングルタイヤだった。タイヤを1本ずつにし、従来の約1.5倍の大きさにしたことで、段差を乗り越えやすく、小回りも利くようにした。

段差等のショックを和らげるショックアブソーバー付きの車輪
だが、開発の難しさにも直面した。タイヤは1本のため骨組みの長さなどにわずかな誤差があるだけで走行に違和感が出やすい。大きなタイヤで重くなる分、他の部品を軽量化する必要があり、高い技術力も求められた。量産には不向きともいえる難しい設計だったが、「独自の価値」にこだわった。
約2年の開発...
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